2-2『予期せぬ衝突』


補給『チャプター開始、チャプター開始』

82車長「来たぞ」

同時刻、指揮車の82車長等にも作戦開始の報が伝わる
指揮車は自衛達の小型トラックよりも1km以上先、少し道をはずれた所で
同様に木立にその身を隠していた

82車長「作戦開始だ。82操縦手、出せ」

82操縦手「了解」

指揮車はエンジン音を唸らせ発進、身を隠していた木立を押し倒して
草風、凪美の町を結ぶ道へと出る
そして目標の隊列を真正面から迎え撃つべく、道に沿って進みだす

82車長「見えた、真正面」

目標の隊列はすぐに見えてきた
騎兵と馬車で編成された隊列が、高機動車と小型トラックに追われながら
道の先から走ってくる

82車長「よし、一度停車しろ」

指揮車は一度停車、隊列の進路を遮り、隊列が接近するのを待つ

82操縦手「おとなしく止まりますかね」

82車長「さぁな、期待はするなよ」

特隊A「82車長三曹」

声とともに、82車長の隣のハッチから特隊Aが顔を出した

特隊A「俺等はまだ降車しなくてもいいいんですか?」

指揮車の兵員室では、特隊Aと武器Cが展開に備えて待機していた

82車長「まだ待て。むこうがどう動くかわからん、出方を見る」

特隊A「了解。武器C、まだだってよ」

言いながら特隊Aは再び兵員室へと引き込んでいった



商議会の隊列、馬車の前方



商会騎兵A「おい、なんなんだあれは!?」

商会騎兵B「反対側からも、なんだよあれ!」

突如、馬も無しに動く奇怪な荷車が現れたかと思えば、
それらが自分たちを追いかけて来ている
急に起きた不可解な事態に、護衛の騎兵達はひどく動揺していた

商会騎兵B「おい、どうするんだ……!」

商会騎兵A「どうするって……」

商会騎兵長「バカモンッ!何をうろたえとる!」

戸惑っていた騎兵達に怒号が降りかかった
声の主は馬車を護衛するの騎兵隊の隊長だ

商会騎兵長「あれが何だろうと関係ない。議員を守るのが我々の仕事だ!
       とっとと配置につかんかぁ!」

声を張り上げ、騎兵達に指示を飛ばす商会騎兵長

商会騎兵A「は……は!分かり……」

騎兵達はその指示に答え、行動に移ろうとする

商会騎兵B「ッ!た、隊長……ッ!」

が、一人の騎兵が声を上げ、前方を指し示した

商会騎兵長「何だ一体……な……!?」

彼等の視線の先、隊列の進路上に奇怪な物体が立ちふさがっていた

商会騎兵A「なんだあれ、なんだ!?」

商会騎兵B「か、囲まれてる!?」

進路をふさがれ、三方を囲まれているという状況に、騎兵達にさらなる動揺が走った

商会騎兵長「くッ!重騎兵A!」

重騎兵A「は、は!」

商会騎兵長「重騎兵隊で馬車の周囲を固めろ!そして護衛しつつ馬車を迂回させるのだ!」

重騎兵A「わ、分かりました!」

商会騎兵長「よし、ここは任せたぞ!お前たちは私と来るのだ、
       進路を塞ぐあの奇怪な奴を排除する!」

商会騎兵A「え!?し、しかし…!」

商会騎兵長の命令に、騎兵達は顔を青くする

商会騎兵長「ええい、うろたえるなと言ったろう!
       馬車には何も近づけさせてはならんのだ!行くぞ、続けぇ!」

商会騎兵A「は…は!」

商会騎兵長を先頭に三騎の軽騎兵が、前方の奇怪な物体に向けて駆け出した



82車長「…先頭のがこっちに突っ込んでくる」

隊列の前方に位置していた騎兵が三騎、指揮車に向って突撃してくるのが、
82車長にも見えていた

82操縦手「本気かよ?」

82車長「真正面からだ……82操縦手、少し位置をずらせ。
     馬車を射線からはずしてから撃つ」

82操縦手「了解」

後続の馬車にまで流れ弾が当たらぬよう
82操縦手は道の上から少しだけ指揮車を動かし、射線をずらす

82車長「悪く思うなよ」

車体が再度停車してから、82車長は12.7mm重機関銃を接近する騎兵たちに向けた
そして押し鉄に指の力を込める



奇怪な化け物は道から退いたかと思うと、複数回に渡る奇妙な破裂音を上げた

商会重騎兵「!?」

突然響いた不可解な破裂音に、商会重騎兵は顔を歪める

商会重騎兵「なん――」

その歪めた顔の上半分が、次の瞬間弾け飛んだ
もう一度奇妙な破裂音が響き
顔に続いて、今度は腕が弾ける様にもげて飛んだ
さらに胴の各所からブシュ、ブシュと血と臓物を噴き出す
彼の乗る馬も同じようにその体から血を噴き出し、そして転倒
商会重騎兵の体は転倒の勢いで、地面へと投げ出された

商会騎兵A「な…はっ!?」

商会重騎兵が倒れたことにより、後続の商会騎兵Aは馬を急停止させた



82車長「後続が止まったか」

82車長は動きを止めた後続の騎兵に照準を合わせようとする
しかしその時、無線に通信が入って来た

補給『ハシント!目標の馬車が道を外れて逃げようとしている!』

82車長「何!?」

見れば目標の馬車が道を外れ、別方向へと走り出していた
周辺は道をはずれれば不整地の地面が広がっているため、馬車は大きく揺れている

82車長「面倒な事を…!」

補給『抑えろ!こちらからも向うが、そちらの方が早い!』

82車長「ハシント了解!聞いたな82操縦手、奴を追いかけろ!」

82操縦手「あの騎兵はどうするんです?」

82操縦主は指揮車を発進させながら尋ねた
82車長は動き出した指揮車の上から、先程動きを止めた後続の騎兵に視線を向ける
騎兵達は倒れた先頭の騎兵を囲み、大きく動こうとする様子は無い

82車長「後回しだ!それより馬車を逃がすな!
     特隊A、武器C、お前等は展開に備えろ!」

目標の馬車を捕まえるべく、指揮車はエンジンを吹かす



商会騎兵A「……」

商会騎兵Aは馬上から地面を見つめていた
その地面は商会重騎兵や馬の血液で真っ赤に染まり、
商会重騎兵だった物の部品がその中に点在している

商会騎兵B「な、なんだこりゃ……!?どうなってる!?」

その様子に商会騎兵Bが騒ぎ立てるが、商会騎兵Aはただ呆然と見つめている

商会騎兵A「……ひ、うわ、うわぁぁッ!」

だが次の瞬間、錯乱した商会騎兵Aは馬を操り逃げ出した

商会騎兵B「お、おい!」

そして、あろう事かその先は、馬車を追いかける指揮車の進行方向だった



指揮車は馬車を追い、距離を詰めていた
別方向からは高機動車が近づき、馬車を追い詰めて行く

82車長「速度上げろ、あと少しだ」

82操縦手「やってますよ」

82車長「ギリギリまで近づけて強制停止させるんだ。うまくやれよ」

82車長は不整地で揺れる指揮車の上で、馬車を目で追い続けている

補給『ハシント、後ろを見ろ!そちらの四時方向から敵騎兵!』

だがその時、無線に再度通信が飛び込んできた

82車長「は!?」

82車長は指示された方へ振り返る
指揮車の右側やや後方、指揮車からギリギリ死角になる方向から、
暴走した一騎の騎兵がすぐ側まで迫ってきていた
そして騎兵は指揮車の真正面へと飛び出した

82車長「バッ!回避しろッ!」

82操縦手「ッ…馬鹿が」

だが回避が間に合う距離ではなく、馬と指揮車は激突した

商会騎兵A「ぎげッ!?」

82車長「ヅッ!」

衝突により鈍い音と衝撃が両者を襲う
だが質量には圧倒的な差があり、騎兵は空き缶のように跳ね飛ばされた
そして宙を舞い、地面へと叩き付けられる
落下した先は、当然指揮車の進行方向だ

82操縦手「チッ」

投げ出された騎兵を回避するべく、82操縦手はハンドルを切る
しかし間に合わず、指揮車の片輪が馬とその主の亡骸へと乗り上げた

82車長「おあッ!?」

生物の亡骸を轢き潰した、気色の悪い感覚が一瞬指揮車へと伝わる

82操縦手「糞がッ」

82式指揮通信車は車高が高く、バランスが悪い
それなりのスピードを出していた指揮車は、
騎兵の亡骸に乗り上げた事でバランスを崩した
さらに間の悪いことに、片輪が微かに浮いた指揮車の進行方向には、
地面から剥き出しになった岩の塊
それにもう片側の車輪が乗り上げ、指揮車はさらに揺れる

特隊A「ごッ!?オイ、何だッ!?」

82操縦手「つかまってろッ!」

周辺がやや下り斜面になっている影響で、指揮車の車輪は横滑りを始めていた
82操縦手は車体が転倒しないよう、必死でハンドルを操る

82車長「82操縦手、停車しろ!」

82操縦手「今ブレーキかけたら転倒します!」

指揮車は危うい体勢と速度のまま、馬車のすぐ近くまで接近していた

82車長「おい、前方!」

82操縦手「やばい…」

進行方向には馬車とそれを護衛する重騎兵の内の一騎の姿

重騎兵A「…ッ!」

そして手前にいた重騎兵が、指揮車のフロントの角で弾き飛ばされる

重騎兵A「ごぁッ!?」

馬は弾き飛ばされ、騎兵は明後日の方向へと投げ出される

82操縦手「ああ、糞」

そして指揮車は、その強固な鼻っ面を目前の馬車の横腹へと叩き込んだ

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